さて、瀬田信哉さんの基調講演の中で、日本における対馬の位置づけについてのお話がありました。とても考えさせられたのですが、対馬が大陸と九州とつながったままで、対馬暖流が日本海に流れていなかったら、日本の自然はどうなっていたのだろうか、つまり、対馬という島ができたからこそ、日本の自然は多様で豊かになったのだと。そういう視点で対馬を捉えると、素晴らしい島に思えてしかたがありません。
また、「自然は寂しい。しかし人の手が加わると暖かくなる」と民俗学者の宮本常一氏の言葉を引用しながら、日本人の原風景についてのお話がありました。
日本人の風景に対する感性というものは、自然にできたものではなく、長い時間をかけ、人が自然に働きかけてきたことで築かれたものですが、生活様式の変化によって、普通にあった風景が普通でなくなっている、失われつつあります。つまり、今の子供たちは、私たちとは全く違う風景の中で育ち、私たちとは違う感性を持ってしまう。それは同じ日本人としてとても寂しいことではないかと思いました。
特に、日本の田園風景で失われた最大のものは、森林や田畑ではなく、草原であるそうです。かつて草原は国土の11%を占めており、里山のいたるところに草原があったと言われます(今では国土のわずか1%に激減)。ということは、日本人の自然観の中には草原というものはとても重要な要素の1つであったわけです。
千俵蒔山の草原も、1947年から比べると約93%失われています。つまりは、佐護の子供たちの風景感もずいぶん変わってしまっているわけです。
全国草原再生ネットワークの高橋佳孝さんは、復活させた千俵蒔山の野焼きや雑木伐採作業に佐護の子供たちを参加させることが大事だとおっしゃっていました。確かに、子供たちに「ああ、千俵蒔山の草原は美しい、やすらげるな」という感性を今持ってもらわないことには、千俵蒔山の草原も将来にわたって守ることはできなくなります。
今、私たちが何をすべきか、どう行動すべきか。このシンポジウムではそういったことが見えてきたのではないかと思います。千俵蒔山の草原再生は、これからが正念場ですが、みなさんのご理解とご協力をよろしくお願いします。

このままでゆくとあと数年で美しい草原を観ることができなくなります。
千俵蒔山は、壱岐対馬国定公園の一部、長崎県重要里地里山の一つに指定されるほどの美しい草原景観を有していました。しかし、機械化農業の進展等により急速に森林化が進み、今では山頂部にわずか7.4haの草原を残すのみとなってしまいました。また、草原環境に適応・依存してきた動植物の生息環境が悪化することで生物多様性が低下し、悠久の時間をかけて築かれてきた草原管理の知恵・技術・人と草原の関係性など文化的な多様性も失われつつあります。
千俵蒔山の草原景観、生物多様性、文化多様性を将来にわたって維持・継承するためには、佐護区民をはじめとする対馬市民の関心を高め、千俵蒔山の価値、草原再生の意義や可能性、方向性をみなで共有するとともに、各主体の役割に明確にしながら連携を強化する必要があります。
そのため、区民・市民、行政、専門家を交えたシンポジウムを以下の通り開催します。お誘い合わせの上、多数のご参加をお待ちしております。

1. 基調講演「野焼きの美学」 前・(財)国立公園協会理事長 瀬田信哉
2. 総合討論「千俵蒔山の未来に向けて-その魅力を知る・伝える・分かち合う」
○話題提供者・パネリスト:
「千俵蒔山草原再生プロジェクト」
佐護区長 平山美登
「千俵蒔山の自然」
対馬の自然と生き物の会会長 國分英俊
「千俵蒔山の歴史・文化」
郷土史家 永留久恵
「草原再生の全国的動向と課題、そして未来」
全国草原再生ネットワーク会長 高橋佳孝
○コーディネーター:佐護区事務局長 前田剛
■開催日時:2009年2月22日(日)13:30~16:30(開場13:00~)
■会場:佐護小中学校体育館(長崎県対馬市上県町佐護)
■主催:佐護区
共催:対馬市
後援:スカイクラブ対馬・対馬市消防団上県地区本団・対馬市消防本部・佐護小中学校・佐護校区青少年育成協議会・長崎県・九州地方環境事務所
助成:全労済地域貢献助成・(財)自治総合センター環境保全促進事業助成・(財)松園尚巳記念財団地域振興事業助成
【問い合わせ先】℡:0920-84-5577(佐護区事務局 前田剛 ℡:0920-84-5577)
勉強会では、農と自然の研究所・宇根豊さんが講演。
みなさんは、赤トンボが田んぼで生まれ育っていることを知っていますか?ヘイケボタルも、メダカも、カエルも、さまざまな生き物たちが「農業生物」なのです。そして、農業生物や祭り、美しい農村風景、そして涼しい風、すべてを百姓が育んできました。
実は、そのことを多くの人たちは知りません。それは、田んぼはお米を生産する場であるという環境と切り離された「まなざし」が国民の中にあるからです。日本農政も、近代技術によって生産収量を増やすことのみに力を入れ、田んぼを支えてきた百姓を守ることを忘れてきました。
宇根さんは言います。「田んぼを守るのではなく、百姓を守れ」と。
ドイツの農家の平均所得は400万円で、うち210万円は国の税金による直接支払いだそうです。しかし、国民から「百姓だけ何でそんな過保護をするのか」という苦情は出てきません。国民が、国土の風景を享受するために百姓の生活を支えているとい言うのです。
そこで宇根さんは、百姓が日本の農村風景や生き物、日本人としての原風景感等を支えてきた結果に対し、ヨーロッパと同様、日本も田んぼを守るためというよりは百姓を守るための直接支払い制度(環境デカップリング)を導入する必要があるという政策提言をされています。
また、講演の中で宇根さんは「産地間競争の中、味や安心・安全、減農薬では太刀打ちできない、そんなことやってももう遅い、対馬の農村風景やヤマネコを守るために米を買ってもらうという新しい仕組みづくりが必要」とのアドバイスがありました。特に、ツシマヤマネコという存在は他の地域からすればかなり恵まれているとのこと。
ヤマネコといっても、山にばかり生息しているわけではありません。昔から、田んぼなどの里地でもその姿がよく目にされており、一部の地域では「田ネコ」と呼ばれているほどです。
それは百姓の手により維持されてきた田んぼが、ヤマネコの餌となるネズミやカエル、鳥など多くの生きものたちを育んできたからです。田んぼは、お米を作るだけでなく、ヤマネコをはじめとする多くの生き物たちを支えているのですね。
今後、ヤマネコをはじめ多くの生き物を守っていくためにも、米づくりを持続させなければなりませんし、農家を守っていく必要があります。佐護の農家の高齢化は進み、若手の担い手はごくごくわずかとなっています。担い手づくりのためには、ブランド化を図り、島外に向けて高く買ってもらうような働きかけや仕組みづくりが必要になってきます。
また、地産地消。島民のお米消費の考え方もチェンジ!していく必要があります。「あなたは、荒れ果ててゆく対馬の農村風景に涙をこぼしつつ、内地産のお米を安いからといって買いますか?」と。
いろいろ、考えさせられる勉強会でした。報告以上。

ストーリーを要約すると、
「大事に飼われていた『ニャーコ』が迷子になり、300日ぶりに保護されて家に帰ってくる。しかし、そこにはおじいさんの姿はなかった。おじいさんは、ニャーコが迷子になっているとき、病気で他界されたが、病室ではニャーコのことをいつも気にしていた。そんな思いが通じてか、ニャーコが帰宅し、おばあちゃんと再会する。『私が1人になってさみしいけん、じいちゃんがニャーコを連れて来てくれた』とおばあちゃんは感激する」
これは、ノンフィクションです。ニャーコの保護の決めては「マイクロチップ」。米粒ぐらいの電子標識を皮膚の下にうめ、読み取り機で「どこの誰々さんの動物か」ということが識別できる代物です。

この日をもって、佐護区がモデル地区となったわけですが(市内では7番目だそうです)、指定のねらいは、「住民の防火意識並びに自主的な防火対策の高揚を図ること」。要は、区民一人一人の防火意識をモデル地区指定を機にさらに高めようということです。区民のみなさんは常日頃から用心されていると思いますが、無火災目指して頑張りましょう!!
式では、佐護保育所幼年少年クラブによる防火宣誓がありました。子供たちが消防はんてん姿で「寝たばこは絶対やめる。ストーブは燃えやすいものから離れた位置で使用する。ガスこんろなどのそばを離れるときは、必ず火を消す」と住宅防火の3つの習慣を暗唱していました。子供たちはわけわからず暗唱していたと思うのですが、あの子供たちのかわいらしさで言われると、何か頑張っちゃう気になりました。

子供たちの活動報告の展示を見ていて、大変関心しました。
その中でも特に、お互いのコミュニケーションを高めるために「聞くスキル」を学んでいたこと。聞き上手はコミュニケーションの基本だと思いますが、「アクティブリスニング」などの手法を取り入れて、相手が話しを聞いてくれれないことがどれだけ話しにくく、辛いことかを体感し、相手の気持ちになって、「①うなずき②あいづち③はげまし④くりかえし⑤いいかえ」というごくごく簡単なことが大事なのだということを学んでいたということです。これは私たちが日々仕事や家庭、友人関係においても大切なことだよな、と改めて思いました。
写真は、PTA、地域の方々、佐護中学校生徒の合唱です(曲は「手紙」)。歌詞もさることながら、みなさんの想いが声に込められていて、とても感動しました。
